2005年 05月 31日
日曜日 |
日曜日は、ンバック・マーの実家に招かれた。招かれたというか、成りゆきでいくことになってしまった。ンバック・マーとお隣のアミンさんは毎週日曜日「アルタナティブ」という、治療院に行っている。なんでも、トラディショナルなヒーリングをする先生がいて、何でも直してくれるらしい。医療保険なんていうものがないインドネシアでは、貧しい人は病院に行けない。アミンさんのお父さんも4年前、内蔵の病気になって(病名はよくわからない)、大手術を受けることになった。家族親戚一同、土地もバイクも宝石も売って手術を受けさせたが、結局病気は治らず、お父さんは2年後に亡くなってしまった。約60万円かかった治療費はもちろん戻ってこないので、家族親戚一文無しになってしまったのだそうだ。そしてアミンさんは今、前の家の住み込みお手伝いさんをしている。
インドネシアでは「お医者さんは偉いひと」なので、あまり文句などは言えない。一昔前に日本でも、おばあさんとかが医者に手を合わせて拝んでいたけど、ここもそんな感じ。医者はすごく偉そう。「インフォームド・コンセプト」なんてまだ導入されていないから、貧しい患者さん家族は、なんだかんだと医者の言いなりになって、何のための薬かとか手術だとかわかっていない場合が多い。たいてい「金儲け」が目的なので、意味もなく「抗生物質」たるものをやたらたくさん出す。目が痛くても、足が痛くても、ウイルス性の風邪でも「抗生物質」なのだ。
ともあれ、この「アルタナティブ」。「ヒーリング」と名のつくものにはお腹から沸き上がる好奇心を押さえられないワタシ。ンバック・マーの脇の下にできていた卵大のしこりがこの治療のおかげでずいぶんと小さくなったと聞いて、どこも悪くないがとりあえず同行してみた。アミンさんが途中で今朝生みたての卵を2つ買っていく。何のために使うのか?
その診療所はただの普通の家で、「先生」は普通のおじさんだった。サロン(腰巻き)をして煙草を吹かしてどこにでもいるおじさんのよう。「肩が痛い」ととりあえず思い出したように症状を訴えてみた。治療が始まったとたんに、「ヒューヒュー」と口笛みたいな声を出し、鳥の羽をむしり取るように痛みのある周りを「むしって(?)」いく。目は半開きでちょっとトランスがはいっているらしい。「フムッ!フムッ!」という声を出し、見た目は「体から悪いエネルギーを手で吸い取って捨てる」的動き。治療は約5分。そのあと、地元で取れるハーブを使ったジャムー(インドネシアの漢方)の作り方を教えてくれる。 私の前の男の人は、ただのミネラルウォーター的飲み物を渡されていた。ンバック・マー曰く、おまじないのかかった「聖水」らしい。そういえば、昔バリで1ヶ月も治らなかった下痢がおまじないの書いた紙の入った水と「エイッ」とお腹に入れられた「火」(のエネルギー)で翌日には治ってしまった経験がある。それと同じようなものらしい。
ンバック・マーは、これは「シャーマンニズム」とは違うという。「精霊」とかの力ではなく(バリではバリアンと言われる人たちが精霊の力でヒーリングをする)、「科学的」な「エネルギーによる、自己治癒力を増長させる」治療なのだそうだ。ということはいわゆる「霊気」に近いものかも。
アミンさんの生みたての卵を渡すと、「先生」はそれを使って痛いところを擦っていく。卵が吸い取ってくれるのだそうだ。卵はあとで海に捨てるのだという。私の肩の痛みはもう慢性的なので、すぐよくなるわけではないのでジャムーを1週間飲んで、また来週来なさいとのこと。実際の身体の痛みだけでなく、「集中できない」「頭が悪い(笑)」などで、試験前の学生も来るらしい。私も最近集中力が落ちて、もの覚えも悪いので、来週はその線でお願いしてみようと思う。ところで、気になるお値段。「お布施」的に払える分だけでよいそう。お金のない人は野菜や卵(悪いエネルギーを吸っていないもの)を置いていくと言う。むかしむかしの村医者みたい。なんかいいなと思った。
治療のあと、ンバック・マーの実家がその近くなのでおいでと誘う。「んじゃ近いなら」と行くことにしたが、そこからバスで1時間!「近くないじゃん」というと、おんぼろバスで乗り換えるから遠いけど、バイクなら20分くらい。 でも、海岸に近づくに従って、景色はどんどん澄んでいく。どこまでも広がる田んぼとそこに群がるアヒルたちの風景はほんとうに和む。
ンバック・マーの村は小さくて、ほとんどが親族だと言う。道も庭も全て掃き清められていて、質素だけれど「キチンと生活している」というのが伝わってくる。洗濯物も小さなパンツから大きなシーツまで全て「キチンと」青空の下ではためいていて、すっかり気分がリラックスして、ずうずうしく枕まで借りてお昼寝してしまった。
そのあと焼き物の作っている家とテンペ(大豆から作った食べ物、インドネシアの日常食)をチークとバナナの葉につつんで発酵させている家を見せてもらった。テンペはうちでも毎日食べているけど、作っているところ見るのは初めて。前から「これをロンドンで売れば、ベジタリアンに大受けするだろうな」と思っていたので、ぜひ作り方をマスターしたいものだ。焼き物は植木鉢にしたり、七輪にしたりするそう。こんな七輪で焼き鳥焼いたら美味しいだろうな...
by saeinyogya
| 2005-05-31 15:41